脱プラスチックに向けて飲食サービスが取るべき行動

2020年にレジ袋有料化がスタートし、買い物でエコバックを持ち歩くことが習慣化されつつあります。さらに使い捨てプラスチック製品削減の取り組みとして、2022年4月から大手スーパーやコンビニを対象に、ストローやスプーンなどの使い捨てプラスチック製品の無料提供についても見直されることが決まっています。

2022年1月には、プラスチック新法と呼ばれる「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(「プラスチック資源循環法」)に基づき、プラスチックの使い捨てスプーンなど、削減対象の12品目を定めた政令が閣議決定されました。

対象となる事業者は、これまで無料で提供していたプラスチック製品を有料化、プラスチック以外の素材で作られた代替品に変更するなどさまざまな対応が義務付けられます。

2022年4月に新法が施行された後、脱プラスチックに向けて飲食サービスが取るべき行動と把握しておきたいポイントを具体的なプラスチック削減策と共に紹介します。

プラスチック資源循環促進法とは?

脱プラスチックに向けて飲食サービスが取るべき行動

2021年6月に成立し、2022年4月1日から施行される「プラスチック資源循環促進法」とは、プラスチックごみの削減とリサイクルの促進を目的とする新たな法律です。メーカーによる設計や製造の段階から廃棄まで、包括的にプラスチック資源が循環する仕組みの構築を目指しています。

制定の背景には海洋プラスチックごみ問題や気候変動などがあります。プラスチックごみはすでに世界中の海に1億5,000万トン以上もの量が浮遊し、さらに毎年800万トンが流入、そして2050年には魚よりプラスチックごみの量の方が多い海になると予測されています。

そうなれば、漁業や輸送業、観光業に大きな打撃を与え、また、プラスチックごみを燃やすことで発生する二酸化炭素などの温室効果ガスによって、今まで以上に気候変動を引き起こすことが危惧されます。

プラスチック資源循環促進法でどう変わる?

政府は、2022年4月からプラスチック資源循環促進法の施行することを閣議決定しています。新法案では具体的にどのような施策が行われる予定なのでしょうか。

  • 環境に配慮した製品の開発への優遇

    プラスチックの使用量が少ない・リサイクルしやすい構造など、環境に配慮して設計や製造された製品を国が認定するしくみが作られます。優れた製品は公表され、国が率先して調達するほか、使用の推進。さらにリサイクル材の使用にあたって、設備への支援も行われます。
    こうした供給する事業者への優遇により製品が充実し、利用する事業者や消費者もより環境に配慮した製品を選びやすくなると考えられます。

  • 使い捨てプラスチック製品の削減の義務

    使い捨てプラスチック製品の提供やサービスしている事業者に対しては、無料で提供している使い捨てプラスチック製品の削減目標を設定し、使用量を減らすことが求められます。特に、使い捨てプラスチック製品を年間5トン以上使う大手事業者には、罰則を設けて義務づけるという方針が固まりました。

    今回の規制により事業者は、「提供方法の工夫」や「提供する製品の工夫」で対応することが求められています。

    • 「提供方法の工夫」
      • 消費者に必要・不要の意思確認をする
      • 不要とした消費者にポイントの還元などをする
      • 消費者に有償で提供する
      • 提供した消費者に繰り返し使うよう促す
    • 「提供する製品の工夫」
      • 繰り返し使うことができる製品の提供
      • 再生可能素材の利用や軽量化などの工夫がされた製品の提供
  • 特定プラスチック使用製品と対象事業者は?

    今回の法案成立を受け、4月から無償提供の見直しが始まる「特定プラスチック使用製品」が具体的に発表されました。今回、対象となった使い捨てプラスチック製品12品目と対象事業者は以下の通りです。

    • 「特定プラスチック使用製品」
      • ストロー
      • フォーク
      • ナイフ
      • スプーン
      • マドラー
      • ヘアブラシ
      • くし
      • カミソリ
      • シャワーキャップ
      • 歯ブラシ
      • ハンガー
    • 「対象事業者」
      • 各種商品小売業(無店舗のものを含む)
      • 飲食料品小売業(野菜・果実小売業、食肉小売業、鮮魚小売業及び酒小売業を除き、無店舗のものを含む)
      • 宿泊業
      • 飲食店
      • 持ち帰り
      • 配達飲食サービス業

飲食店でできるプラスチック削減の取り組み

飲食店でできるプラスチック削減の取り組み

海洋プラスチックゴミの問題の深刻さを伝えるコンテンツとして、「鼻にストローが刺さったウミガメ」という有名な動画があります。この動画が公開されると瞬く間に世界中に広まり、それがきっかけで、スターバックスやマクドナルド、すかいらーくHDなど、飲食系の大企業がプラスチックストローの削減に動きだした、とされています。

また、ストローのような石油製のプラスチックが細かくなったごみ、マイクロプラスチックは、海中のPCB、ダイオキシン、DDTなど、残留性有機汚染物質を取り込みやすいことが最近分かってきました。マイクロプラスチックは海洋を広範囲で移動するので、有害化学物質の運び屋となって海の汚染を広げてしまう恐れがあります。

そのマイクロプラスチックを餌と間違え食べてしまった魚介類を人が食用すれば、有害化学物質が体内に蓄積され人体に悪影響を及ぼしてしまう可能性も生じてきています。

このような事実からアメリカ、ヨーロッパを中心にプラスチックストローを始め、マドラー、カトラリー、皿などの提供禁止を定める条例が制定され実施され始めました。

日本国内でもこれから同様の動きが加速することが予想されます。大企業だけでなく個人の飲食店でもプラスチック削減のためにできることは多くあります。まずは小さなことから環境に配慮した取り組みを行いましょう。

飲食サービスにおいては、プラスチック製のフォーク、スプーン、テーブルナイフ、マドラー、飲料用ストローの提供方法を見直すことが求められます。具体的な施策として以下が挙げられます。

  • お客様に必要・不要の意思確認を行う
  • 不要としたお客様にポイントを還元する
  • お客様に有料で提供する
  • 再生可能なエコ素材などを原料とする代替製品に切り替える

などがあります。

ここで挙げたうちの一つ「再生可能素材などを原料とする代替製品に切り替える」は、新しい生活様式が定着した今日では、アフターコロナ後もテイクアウトの需要はまだまだ続くことから、最もインパクトのある施策と言えるでしょう。

テイクアウト容器はこれまでプラスチック製のフードトレーが多くを占めていましたが、最近では環境への配慮のために紙製の質感を生かしたデザインやおしゃれな紙容器の種類が増えてきています。

その中でも非木材パルプを使ったテイクアウト容器は、プラスチック製品の削減だけにとどまらず、森林破壊を防ぎ森林資源保護の有効な手段として期待されている環境に優しい製品として注目を集めています。そんな非木材パルプとして、今回はバガス(サトウキビかす)とバンブー(竹)を紹介します。

  • バガス(サトウキビかす)

    バガスとは、さとうきびを圧縮したあとの絞りカスのことです。砂糖を作るためにさとうきびから糖汁を絞り取り、あとに排出される大量の茎や葉などの繊維質をバガスと呼んでいます。
    さとうきびは世界70ヵ国以上で栽培されており、年間約12億トンも生産される世界第7位の農作物です。そのうち1年間に排出されるバガスの量は、世界中で約1億トンにものぼります。

  • バンブー(竹)

    バンブー(竹)を木材の代わりに選ぶ最大のメリットは、なんといってもその成長速度。木材の10倍以上の速さで成長し、わずか3年ほどで素材として利用することができることから、再生するのに100年以上かかる森林を伐採する必要がなく、森林保護につながります。
    また竹は生命力が強く、人工肥料や農薬をほとんど必要とせずに育ちます。さらに伐採した切り株からまた新たに再生するため植え替えの必要がなく、土壌の劣化を防ぐことができるところもメリットとされています。

  • FSC認証木材

    非木材ではありませんが、FSC認証を受けた木材を材料としたカトラリーにするなど、プラスチック削減に寄与する製品もあります。

環境や資源を守るためにエコ容器を導入する事が大切であると理解していても、準備の負担やコスト面の不安から、なかなか導入を決断できない飲食店が多く存在すると考えられます。

しかし、現在、国内外問わずプラスチック削減の意識はますます高まりつつあります。したがって、中長期的に考えた時、導入によって多くのメリットがあるため早い段階でエコ容器へ切り替えることをおすすめします。

エコ容器を導入するメリット

エコ容器を導入するメリット

エコ容器をテイクアウトやデリバリーなどの容器に導入することによって、飲食サービスを営む事業者は様々なメリットが得られます。ここでは、主なメリットをご紹介します。

  • 環境への配慮

    非木材パルプのエコ容器導入による一番のメリットは、森林資源枯渇を抑制する環境保護に大きく貢献できることです。また、プラスチック削減を心がけることでマイクロプラスチックのような海洋ごみの削減やごみ処理時に発生する二酸化炭素などの温室効果ガスの発生抑制など、さまざまな面で環境保護に貢献出来ます。

  • 消費者からの信頼を獲得

    最近メディアで取り上げられるSDG’sの高まりと共に様々な環境問題について取り上げられることが増えました。消費者の環境問題への関心が高まり、消費者自身が環境問題に取り組むことが当たり前という意識が醸成されつつあります。お店として環境問題に取り組むことが消費者からの信頼を獲得し、イメージアップに繋がります。しいては集客効果や大きな収益に繋がることもあります。

  • イメージの向上

    エコ容器の多くは材質の特徴をそのまま表現できるため、ナチュラルな雰囲気を演出します。見栄えを良くし、集客率の向上に繋げることが可能です。
    新しい生活様式が定着し、飲食店や惣菜コーナーのテイクアウト需要が高まっています。さらにSNSの影響から料理に美味しさだけでなく見栄えやおしゃれさを求める若者が増えており、今後は容器選びがさらに大切になるでしょう。

食品容器や包装は、私たちの生活に必要不可欠とものになっています。特にプラスチックでできた容器や包装は機能性も高く便利である一方、使用後にゴミとして捨てられる事で地球温暖化問題、ゴミ処理問題、海洋プラスチック問題、エネルギー資源問題など様々な問題に直面していることを認識されたと思います。

このことから日本ではプラスチックの過剰な使用を抑制し、賢い付き合い方を行政だけではなく、企業・個人・団体と幅広く呼び掛けています。

今回紹介した、さとうきびから砂糖汁を絞ったカスのバガスや成長がとても早い竹からつくられるバンブーパルプを材料とした容器は、どれも永続的に活用できる100%植物由来の原料を使用しているため、環境問題に大きく貢献できます。

これらの取り組みを実施する事で、ぜひ環境保全活動にご参加下さい。